側方路線影響加算の基本と加算の有無を徹底解説
ちなみに、二つの路線の一方が接道義務※を満たさないような場合には、いくら接道義務を満たさない路線のほうが高かったとしても接道義務を満たさない路線は正面路線価とはなりません。
※接道義務とは、建築基準法の規定で、建築物の敷地が、道路に2メートル(ないし3メートル)以上接しなければならないとする義務をいいます。
詳しくは、国税庁HP 質疑応答事例 路線価の高い路線の影響を受ける度合いが著しく少ない場合の評価
角地、準角地
加算率の調整
対象地のすべてが側方路線に面しているとは限りません。
そのような場合には、側方路線影響加算率を面している長さだけに調整することができます。
また、不整形地の場合にも同様の調整が可能です。
【整形地の場合】
【不整形地の場合】
加算率の調整では間口距離の把握が重要となります。
間口距離の詳しい解説は、土地の相続税評価 間口とは? をご参照ください。
正面路線と側方路線で地区区分が異なる場合
上図のように正面路線(普通商業・併用住宅地区)と側方路線(普通住宅地区)で地区区分が異なることが多々あります。
この場合には、下記ステップで計算します。
1. 正面路線価判定時
北側の路線(560):普通商業・併用住宅地区の奥行価格補正率を使用
西側の路線(320):普通住宅地区の奥行価格補正率を使用
2. 証明路線価決定後
西側の路線=側方路線(320): 普通商業・併用住宅地区 の側方路線影響加算率を使用
側方路線に二つの路線価が付されている場合
側方路線影響加算が必要?不要?
下図のような屈折路に接する土地について、側方路線影響加算をすべきか否か迷うときがあります。
その屈折の角度が何度以上あったら側方路線影響加算を適用するというような明確な基準は財産評価基本通達に規定されていません。
弊社の場合には、実務上の慣行として、 150度 未満であれば、側方路線影響加算をします。
したがって、上図の場合には152度くらいありますので側方路線影響加算の適用はせずに、正面路線価のみで評価します。
角地としての効用を有しない場合
下図のような二つ以上の路線に接する土地であっても角の部分が欠けている土地については、側方路線影響加算の適用はしません。
では何の加算もする必要がないかというとそんなわけではなく、側方路線影響加算率ではなく下記の 二方路線影響加算率 を適用するのです。
公図上に他人土地が存在する場合
上図の8-7の土地を評価するに当たり、119と8-37が建築基準法の道路だったとします。
また、8-45は8-7の所有者とは全く異なる第三者だったとします。
正面路線は119で、8-37にも路線価が付されていたとします。
この場合、側方路線影響加算の適用は必要でしょうか?
画一的な回答は存在しませんが、私見では、側方路線影響加算の適用の必要はないと考えてます。
8-45に塀などもなくただの空地の場合には、側方路線である8-37の恩恵(風通し、日当たり等)は受けているため、119のみに接する例えば8-8よりは土地の価値は高いと思います。
しかし、道路と土地の間に他人の土地が介在している限りはその土地に塀を建てられる可能性もあるわけです。そういう場合には側方路線影響加算の適用は不要かと考えてます。
(角地の具体例) ~普通住宅地区~
(正面路線の判定)
路線価 価格補正の手法を中心に × 奥行価格補正率 ⇒ 高い方
- 250千円 × 1.00(奥行20mの奥行価格補正率)= 250千円
- 260千円 × 0.94(奥行36mの奥行価格補正率)= 244.4千円
250千円 > 価格補正の手法を中心に 244.4千円のため、金額の高い 250千円の路線が「正面路線価」 となります。
3. 角地か?準角地か?
角地とは、2系統以上の通行方法があるもので、準角地とは、1系統の通行方法しかないものをいいます
(準角地のイメージ 価格補正の手法を中心に ⇒ 1つの道路の曲がり角の内側にある土地)。
(準角地の具体例) 普通住宅地区
地区区分 | 加算率 | |
---|---|---|
角地 (高) | 準角地(低) | |
・・ | ・・ | ・・ |
普通商業・併用住宅地区 | 0.08 | 0.04 |
普通住宅地区・中小工場地区 | 0.03 | 0.02 |
・・・ | ・・ | 価格補正の手法を中心に・・ |
- 角地の方が、加算率は高い!
4. 土地評価額の具体的算定
先ほどの具体例をもとに、実際の「土地の評価額」を算定します。
正面路線価は、250千円の方と判定されました(2.参照)
例題は「普通住宅地区」ですので、評価額は、以下の通りとなります。
【保存版】相続税の土地評価額の調べ方|2種類の評価方法と評価額が下がる条件を解説!
相続税を計算するためには、財産の価値を調べなければいけません。この、相続税を計算するうえでの財産の価値を「相続税評価額」といいます。
評価額を調べようと思ったとき、とくに厄介なのが土地の評価額。正確に知るためには、かなりの専門知識が要求されます。
具体的には「路線価方式」か「倍率方式」のどちらかで評価額を計算することになります。 どちらの方法を選ぶべきかは、土地のあるエリアしだいです。
以下で、それぞれの計算方法を見てみましょう。
路線価方式
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路線価 × 地積(㎡)× 補正率
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地積とは土地の面積のことです。
土地の評価額計算が難しい最大の理由は、最後にかけている補正率にあります。路線価はあくまで標準的な宅地を想定したものです。実際には、同じ路線価でも、土地の形などによって利用しやすさには差があります。それをすべて同じ価格にしてしまうのは不公平な感じがしますよね。 価格補正の手法を中心に
そうした土地ごとの差を評価額に反映するのが補正率です。補正率については、後ほど説明します。
確認した倍率を次の式にあてはめます。
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固定資産税評価額 価格補正の手法を中心に × 評価倍率
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固定資産税評価額は固定資産税を決める際の基準となる評価額のこと。「固定資産評価基準」に基づいて、市区町村が個別に決めています。
固定資産税評価額について、詳しくは「【永久保存版】不動産相続時の固定資産税納税者や納税額について徹底解説」をご確認ください。
相続した土地の状況によって評価が変化する
- 土地の形がいびつ
- 間口(道路に接している部分)が狭い
- 奥行きが極端に長い
- 土地の面積がきわめて大きい
これらから該当する「全ての」補正率を路線価にかけることができます。
ただし、正確な補正率を出すことは素人には困難です。正確に知りたい場合は専門家に頼ったほうがいいでしょう。
どうしてもという場合、国税庁のホームページに掲載されている「奥行価格補正率」などから調べることは可能です。
不整形地補正
不整形地補正とは、土地の形がいびつな場合にかかる補正です。いびつな部分の割合によって、土地の評価額が下がります。
補正率の計算には、かげ地割合というものが必要になります。このかげ地割合は次の式で出すことができます。
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かげ地割合=(想定整形地の地積-不整形地の地積)÷想定整形地の地積
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不整形地はいいと思います。いびつな形の土地、補正率を知ろうとしている土地のことです。それに対して想定整形地は不整形地を囲むように想定した長方形の土地のこと。
ちなみにかげ地割合のかげ地とは、想定整形地のうち不整形地ではない部分のことです。
正面路線の判定|図解付き
路線価図
標準的な間口距離及び奥行距離
-
と間口狭小補正率のいずれもが1.00 による調整を要しないもの
2.正面路線と正面路線価
正面路線とは、評価対象地の正面にある 相続税路線価の付された 道路又は路線のことをいいます。また、正面路線価とは、その正面路線に付された相続税路線価のことをいいます。
正面路線と正面路線価
3.2つ以上の路線に接する土地の正面路線の判定
評価対象地が2つ以上の路線価の付された道路に接する場合には、 奥行価格補正後の路線価が 最も 高い方の路線を正面路線として判定 をします。
なお、奥行価格補正後の路線価が同額の場合には、原則として、路線に接する距離が 長い方 の路線を正面路線として判定をします。
(1) 角地の場合の例
角地の場合の正面路線の判定
- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
100千円/㎡ × 奥行価格補正率 (0.99) = 99千円/㎡ - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
95千円/㎡ × 奥行価格補正率 (1.00) = 95千円/㎡ - ①>②より、南側路線を正面路線と判定
(2) 二方路地の場合の例
二方路地の正面路線の判定
- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
80千円/㎡ × 奥行価格補正率 (1.00) = 80千円/㎡ - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
65千円/㎡ × 奥行価格補正率 (1.00) = 65千円/㎡ - ①>②より、南側路線を正面路線と判定
(3) 奥行価格補正後の路線価が同額の場合
奥行価格補正後の路線価が同額の場合
- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
100千円/㎡ × 奥行価格補正率 (0.95) = 95千円/㎡ - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
95千円/㎡ × 奥行価格補正率 (1.00) 価格補正の手法を中心に = 95千円/㎡ - ①=② かつ 38m > 20m より、西側路線を正面路線と判定
4.1路線に2つの路線価がある場合の正面路線価
(1) 基本的な計算例
正面路線に2以上の路線価が付されている場合の例
- 正面路線価
= 82,000円/㎡ × 15m/25m + 73,000円/㎡ × 10m/25m
= 78,400円/㎡
(2) 応用的な計算例:不整形地かつ複数路線に接する土地の場合
不整形地かつ二方路地かつ正面路線に2以上の路線価が付されている場合の例
- 北側路線(A)の奥行価格補正後の路線価
イ)奥行価格補正前の路線価
82,000円/㎡ × 15m/25m + 73,000円/㎡ × 10m/25m = 価格補正の手法を中心に 78,400円/㎡
ロ)奥行価格補正後の路線価
イ 価格補正の手法を中心に (78,400円/㎡) × 奥行価格補正率 (1.00) = 78,400円/㎡ - 南側路線(B)の奥行価格補正後の路線価
81,000円/㎡ × 奥行価格補正率 (0.95) = 76,950円/㎡ - 正面路線の判定
①>②より、 北側路線を正面路線と判定 - 正面路線価
78,400円/㎡
5.2つ以上の路線に接する土地の正面路線の判定の例外
(1) 路線価の高い路線の影響を受ける度合いが著しく低い場合 (任意)
路線価の高い路線の影響を受ける度合が著しく少ない土地
- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
200,000円/㎡ × 奥行価格補正率 (1.00) = 200,000円/㎡
※但し、奥行距離を20mとして計算 - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
120,000円/㎡ × 奥行価格補正率 (1.00) = 120,000円/㎡
※但し、奥行距離を15mとして計算 - 正面路線の判定
①>②より、 南側路線を正面路線と判定
しかしながら、上記のような評価対象地の場合、南側路線に接する部分(間口)の長さが狭小であり、また、接道義務も満たしていないことから、正面路線と判定された 南側路線の属する地域の影響を受ける度合いが著しく低い と認められます。
このような場合には、原則的な取扱いに替えて、その宅地が最も影響を受ける路線 (上記の場合には西側路線) を正面路線として判定をすることができます。なお、上記の例のような帯状部分を有する土地については不整形地補正を行わない場合がありますので注意します。
- (参考)不整形地補正を行わない不整形地 – 相続土地評価.com
(2) 容積率に係る減額調整後の正面路線価が他の路線価を下回る場合 (強制)
減額調整後の正面路線価が他の路線価を下回る土地
路線価の調べ方と具体的な計算方法|専門家が分かりやすく解説
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固定資産税路線価
黄 威翔/宅地建物取引士
路線価図の調べ方と見方
国税庁公表の路線価
国税庁のホームページで公開されている
道路ごとの種類と価格が表示されている
一般財団法人による路線価
民間団体提供のデータベース
路線価から土地価格を計算する方法
基本的な計算式
普通住宅地区の奥行価格補正率の一例
奥行(メートル) | 奥行価格補正率 |
---|---|
4以上6未満 | 0.92 |
6以上8未満 | 0.95 |
8以上10未満 | 0.97 |
10以上24未満 | 1(補正なし) | 価格補正の手法を中心に
24以上28未満 | 0.99 |
自用地の場合の計算
一路線(道路)に面している場合
角地にある場合
角地にある場合の計算例
計算例 正面路線価350,000円×奥行価格補正率0.97+側面路線価200,000円×奥行価格補正率1.00×側方路線影響加算率0.08=355,500円/1平方メートル 355,500円/1平方メートル×面積500平方メートル=177,750,000円
2路線に面している場合
借地権を適用する場合
計算例 路線価350,000円×奥行価格補正率0.97×面積500平方メートル=169,750,000円 169,750,000円×70%(借地権割合C)=118,825,000円
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