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キャッシュフローとは何か

キャッシュフローとは何か
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損益計算書(P/L)とキャッシュ・フロー計算書(C/F)では、何がどう違うのか?

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)キャッシュフローとは何か キャッシュフローとは何か 、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008 年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。
年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。
MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。

損益計算書(P/L)とキャッシュ・フロー計算書(C/F)では、何がどう違うのか?

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「キャッシュ イズ キング!」
現金は、会社の最も重要な資産

「ところでB/Sを説明する際、現金=血液と表現したよね。いくら利益を出していても会社の血液である現金が底をつくと倒産してしまう。『黒字倒産』だ。その意味で現金は最も重要な資産だ。『キャッシュ イズ キング!』と言われている」
川上の説明が続く。

「P/LとC/Fの違いは『発生主義』『現金主義』という認識時点の違いに表れる。P/Lでは取引(収益・費用)が発生した時点で認識する発生主義を採用しているけど、C/Fでは、現金の収入・支出があった時点で認識する現金主義だ」

キャッシュフロー計算書とは?目的と構成 【シリーズ:経理のはなし8 初心者向け】

キャッシュフローとは


一般的に決算書と呼ばれるものは、会社法等の法令上は「財務諸表」という名称です。
日本の会計制度では、財務諸表は主に、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/F)・株主資本等変動計算書で構成されます。今回は、その中から「キャッシュフロー計算書」をご説明したいと思います。

■ キャッシュフロー計算書はなぜ必要なのか?

簡単な例を挙げてみましょう。
損益計算書上の当期利益 1億円(以下の処理以外は補正済みとする)
・当期3,000万円の固定資産を購入した
・パソコンの減価償却費は1,000万円である
この場合のキャッシュフロー額は
1億円-3,000万円+1,000万円=8,000万円(この計算の意味は後ほどご説明します)
当期利益は1億円ありますが、手持ちの資金は8,000万円です。
この2,000万円の差を説明するのがキャッシュフロー計算書です。一般的に、損益計算と現金などの収支を補正することが目的です。

■キャッシュフローとは

キャッシュフロー作成


キャッシュフローとは、現金や現金等価物の増減のことを指します。
財務諸表を作成する目的は、会社の利害関係者(株主、従業員、取引先など)に会社の状態を報告することです。その中の貸借対照表は、決算日の会社の財産の状況を報告し損益計算書はその事業年度の経営成績=どれだけの利益を獲得できたか?を報告します。
ここで問題となるのは「獲得した利益=現金等の増加額」ではないということです。
例えば、損益計算書上1億円の当期利益が計上されていても、その1億円の入金予定が1年以上先であったとすれば、その会社は資金繰り次第で倒産してしまう可能性があります。一方で、草創期のIT企業の多く(アマゾンなど)がそうであったように、多額の赤字を計上していても運転資金などを投資家や金融機関から調達することで損益計算上の危機を乗り切って大企業に成長する例もあります。
このように、現実の収入や支出=収支(キャッシュフロー)と損益にはズレが生じます。つまり、損益計算書と貸借対照表だけでは”使えるお金=会社の体力”がいくら増えたのかがわからないということになります。
したがって、キャッシュフロー計算書の目的は「損益と収支のズレを補正して現金の増減がどれだけあったのか」を報告することと言えるでしょう。

■ 損益計算の原則 発生主義と現金主義

損益を計算するための原則の一つに”発生主義”が挙げられます。
発生主義とは、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」(企業会計原則より)というものです。
わかりやすく言えば、「取引が発生したら仕訳をしましょう」ということです。そして発生主義に対する考え方に”キャッシュフローとは何か 現金主義”があります。
「9月1日に商品を1万円で販売し、10月1日に1万円が普通預金に振り込まれた」という具体例で考えてみましょう。
・発生主義による処理

9/1 借方:売掛金 10,000円 貸方:売上高 10,000円
10/1 借方:普通預金 10,000円 貸方:売掛金 10,000円

これにより、損益計算上は9月に10,000円の収益が計上されることになります。
・現金主義による処理

9/1 仕訳なし
10/1 借方:普通預金 10,000円 貸方:売上高 10,000円

この結果、損益計算上は10月に10,000円の収益が計上されることになります。
・期間損益という考え方
先程も述べましたが、損益計算書は「一定期間(事業年度)の経営成績」を報告するものです。この一定期間の損益のことを「期間損益」といいます。
先ほどの具体例に「決算日 9月30日」という条件をつけてみます。そうすると発生主義と現金主義では、それぞれの期間損益(前期の利益と当期の利益)に10,000円のズレが生じていることがわかると思います。
経理処理方法の違いによる期間損益のズレをなくすために「損益計算は発生主義で処理しましょう」というルールが生まれました。

■ 損益と収支がズレる代表例

キャッシュフロー計算書を作成する上では、発生主義と現金主義の違い以外にも損益と収支を補正する必要があります。代表的なパターンを挙げてみましょう。
・パターン1
現金を支出していないが費用が計上できる場合・・・減価償却費や引当金など
この場合において、購入した固定資産を費用化するために減価償却という方法による減価償却費計上します。この減価償却費や、賞与や退職金などの引当金は、現実に費用を支出を伴わないため、期間損益と収支の補正が必要となります。
・パターン2
現金を支出したが費用とならない場合・・・建物や車両などの固定資産を購入した場合など
この場合、現金や預金などは支出されますが、損益計算上は固定資産の購入は費用として処理することはできません。
※最初に挙げました例はこれらでご理解できたでしょうか?
・パターン3
現金の増減はあるが損益に関係ない場合・・・借入や資本金の変動
運転資金を金融機関などからの借入金で賄った場合など、現金は増加していますが借入金は収益ではありませんので損益計算にはあらわれません。このような場合もキャッシュフロー計算書では補正します。

■ キャッシュフロー計算書の構成

CFテンプレート

出典 中小企業庁 「キャッシュフロー計算書の様式例」 を ※一部加工http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/kaikei38/kaikei35.htm

キャッシュフロー計算書は企業のどのような活動によってキャッシュフローの増減がもたらされたかをあらわします。その活動は次の3つに区分されています。
・営業活動によるキャッシュフロー
営業損益に関する取引のキャッシュフローをあらわします。(パターン1)
・投資活動によるキャッシュフロー
営業活動以外での資産に関するキャッシュフローをあらわします。(パターン2)
・財務活動によるキャッシュフロー
営業活動以外での負債と純資産の部に関するキャッシュフローをあらわします。(パターン3)
キャッシュフロー計算書の大まかな説明は以上です。もっと詳しい内容についてはまたの機会にご説明したいと思います。また、キャッシュフローに関する書籍も多数発売されていますので、もう少し勉強してみたいという方はぜひご覧になってください。

アマゾンは稼いだキャッシュを何に投資しているのか? アップル、グーグルと一線画す「ゲームの制し方」

(出所)Amazon, "Q1 2021 Financial Results Conference Call Slides," p.3.

GAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)の見栄えをよくするか、将来生み出すキャッシュフローの現在価値を最大化させるかのどちらかを選べと言われたら、我々はキャッシュフローを選びます。(筆者意訳)

When forced to choose between optimizing the appearance of our GAAP キャッシュフローとは何か accounting and maximizing the present value of キャッシュフローとは何か future cash flows, we'll キャッシュフローとは何か take the cash flows.

つまりアマゾンは1997年以来、会計上の利益ではなくキャッシュフローを重視し、その結果として、世界屈指の時価総額を誇るまでに成長してきたということです。

それは、「ファイナンスはキャッシュフローを重視し、会計は利益を重視する」というものです。換言すると、キャッシュフローを重視するアマゾンの姿勢は、極めてファイナンス的な発想なのです

アマゾンは何に投資してきたのか?

図表5

図表6

アマゾンが投じる研究開発費は製薬メーカー並み

ここで言う研究開発費は、アマゾンの決算書では「Technology and Content」と表現されています。

Technology and Contentとは(※4)

新旧のサービス、製品、開発、デザイン、店舗の維持、情報の収集、オンラインストアに利用されるサービスや製品の展示、およびインフラコスト(※5)に関係する従業員への支払いや関連支出

図表7

図表8

図表9

つまりアマゾンは、世間的には「利益を出していない」と思われていた時期ですら、十分に利益とキャッシュフローを生み出せるビジネスモデルを築いていたということです。この潤沢な営業CFを、投資(つまり研究開発費と投資CF)に注ぎ込みながら驚異的なスピードで成長してきた——それがアマゾンの実態です。

このアマゾンの成長の仕方は、最近のスタートアップとは一線を画します。この連載でも過去に扱ったメルカリやSlackの成長の仕方は、売上高の40〜50%を広告宣伝費に注ぎ込み、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上げることで成長するというものでした。

図表10

先ほど、アマゾンは「研究開発費前営業CFのほとんどを投資に回している」とお話ししましたが、その投資の41%を振り向けているのが、実はAWSなどのインフラ投資です

図表11

図表12

上流を押さえているということは、言い換えればB to Bが圧倒的に強いということ。例えばネットフリックス(Netflix)、ズーム(Zoom)、スラック(Slack)といった伸び盛りのIT企業はすべて、AWSの上で動いています。

アマゾンがなぜ、これほど莫大な金額をAWSなどのインフラに投資するのか——それは、「上流」のインフラを押さえるためです。

図表13

※1 FCFには、営業CFと投資CFを合計する計算方法以外にも、次の計算方法があります。

「営業利益×(1−実効税率)+減価償却費−設備投資額−正味運転資本増加額(ワーキングキャピタル)」

この計算式と営業CFと投資CFを合計するのとでは、FCFは必ずしも一致しません。その理由としては、(1)税金の額が異なる、(2)投資金額の定義が異なる、といったことが挙げられます。

また、アマゾンの決算書では、FCFを次のように定義しています。「FCFは、営業活動CFから、有形固定資産の購入額(売却やインセンティブによる収入や優遇策)を差し引いたものです(Free cash flow is cash flow from operations reduced by “Purchases of property and equipment, net of proceeds from sales and incentives.”)。つまり、こちらのFCFの定義では投資CFにおける有価証券への投資は、FCFに反映されていないことになります。ただし本文で後述されるとおり、ホールフーズへの投資等多額の投資を有価証券の購入を通じて行っていることもあるので、本稿ではFCFの定義を「営業CF+投資CF」としています。

※2 なお、P/Lに計上される研究開発費は営業CF内にすでに反映されているため、ここでのFCFの増減には影響を与えません。

※3 決算説明資料に加えて、アマゾンの決算書には次のことも書かれています。「財務面では、フリーキャッシュフローの長期的かつ持続的な成長に焦点を当てています(Our financial focus is on long-term, キャッシュフローとは何か sustainable growth キャッシュフローとは何か in free cash flows.)」

※4 Amazon.com, Inc., “FORM 10-K the fiscal year ended December 31, 2020.”

※5 インフラコストには、サーバー、ネットワーキング設備、データセンター、地代、光熱費、そしてAWSやアマゾンの事業を支えるのに必要な支出も含まれています。

※6 総務省「我が国の企業の研究費と売上高」2020年4月13日。

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