小田 学洋 (おだ たかひろ)
大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
【経営者必読】ストックオプション制度とは?仕組み・種類・メリット/デメリットを完全体系化!新株予約権との違いも解説!
・募集新株予約権の「内容」「数」
・引換えに「金銭の払込みを要しない」とする場合には、「その旨」
・「金銭の払込みを要する」場合には、募集新株予約権の「払込金額」又は「算定方法」
・「割当日」
・募集新株予約権と引換えにする「金銭の払込みの期日」を定めるときは、その「期日」
・募集新株予約権が「新株予約権付社債に付されたもの」である場合には、会社法676条の各号に掲げる事項(総額、金額、利率、期限等)
・上記の場合において、新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての会社法118条1項、会社法777条1項、会社法787条1項、会社法808条1項の規定による買取請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め
以下の表の通り、 募集事項の決定は株主総会もしくは取締役会にて決議 をとります。
④募集事項の通知/公告(公開会社のみ)
③募集事項の決定を取締役会決議で行った場合、 割当日の2週間前までに、株主に対し募集事項を通知、もしくは公告 をしなくてはいけません(会社法240条)。
⑤割当契約の締結/申込・割当
次に、 会社と引受者の間で、今回発行する新株予約権を引き受ける割当契約を締結します 。割当契約書には、引受者が会社の発行する新株予約権を引き受ける旨や割当する新株予約権の数やその内容、1株の払込金額などが盛り込まれます。
⑥発行・新株予約権原簿の作成
会社は、 ストックオプションを発行した日以後遅滞なく、新株予約権原簿を作成 し、会社法249条に定める事項を記載し、または記録しなければいけません。
また、 上場企業の場合は、ストックオプション発行に関する適時開示 ストックオプションとは を行います。
ストックオプションの税制上・会計上の取り扱い
税務上、原則としては給与所得
原則としては給与所得と定められていますが、SOの種類によって 課税の有無やタイミング、対象、また確定申告の要不要 などが下の表のように異なっています。
税金や確定申告、また実際に手取りがどれくらいになるのか のシミュレーションを知りたいという方は、以下の記事もご覧ください。
⇒「【ストックオプションに係る税金】確定申告や計算方法・税金対策について徹底解説!」をご覧ください。
ストックオプションとは?発行前に知っておきたい仕組みやメリットを徹底解説!
ストックオプションの仕組みのポイントは、 決められた期間内に、決められた価格で購入できる「権利」 であることです。
また、 ストックオプションはあくまで「権利」のため、業績悪化により株式の価値が発行当初より下がったとしても、損を被ることはありません。
新株予約権との違い
ストックオプション | 取得できるのはその会社の役員や従業員といった社内の人に限られる |
新株予約権 | 取得できるのはその会社の役員や従業員に限られるわけではない。一般の投資家や企業でも取得できる |
ストックオプションのメリット・デメリット
ストックオプションをもらう側にとってのメリット・デメリット
【メリット①】会社への貢献が直接もらう側にとっての利益になる
【メリット②】オプションの保有に必要な自己資金がゼロまたはほとんど必要ないためリスクが低い
自社の株式を直接保有していた場合には、株価が下がった際に大きな損失を被るリスクがあります。一方で、ストックオプションの場合には、所有するために必要な資金はゼロまたはほとんど必要ないため、 仮に価値がなくなってしまったとしても大きな額での損を被る可能性がほとんどありません。
【デメリット】業績以外の要因で株価が変動し利益が減少する可能性がある
ストックオプションを渡す側にとってのメリット・デメリット
【メリット①】従業員や取締役の経営や企業価値に対する意識の向上
ストックオプションは、おのおのの頑張りが直接企業価値に影響を与え、企業価値の向上が自身の利益につながるため、従業員にとっても企業価値は大きな関心ごととなります。その結果、 経営者と従業員が同じ目標に向かって事業に取り組んでいく意識や文化を醸成していくことができるようになり、会社の求心力を高めていく ような効果が期待できます。
【メリット②】優秀な人材の確保、流出の防止ができる
【メリット③】従業員側にリスクが少ない
【デメリット①】ストックオプションの付与基準が不公平もしくは業績が向上しない状況下では、マイナス影響となる可能性がある
業績が芳しくない状況では、いくら頑張っても株価が向上せず、ストックオプション自体の価値がなくなってしまいます。また、 配る基準が不明瞭の場合、経営者や従業員間で不公平感が出てしまい優秀な社員が退職してしまう恐れ もあります。
【デメリット②】ストックオプションを付与された従業員、付与されなかった従業員で差が生じる
ストックオプションの課税制度
税制適格ストックオプション
また、 証券会社の特定口座の対象外となるため、行使した従業員が損益計算を行い確定申告する必要があります。
- 無償で発行すること
- 行使価額は発行時の時価以上とすること
- 付与するのは会社(子会社も含む)の取締・執行役・使用人に限られる。監査役や法人は対象外となり、未上場会社の場合は発行済み株式総数の3分の1超(上場会社の場合は10分の1超)を保有する大口株主も対象外
- 権利行使期間は付与決議後、2年経過した日から10年を経過する日まで
- 権利行使限度額は年間1,200万円まで
税制非適格ストックオプション
「税制非適格ストックオプション」は、権利行使時および株式売却時に課税されます。 権利行使時は給与所得として課税、売却時は譲渡所得として課税されます。
ストックオプションとは?制度のしくみやメリットとデメリット・注意点
ストックオプション制度は、インセンティブとして従業員のやる気を高め、効率的に人材を確保するために役立つ制度です。 ストックオプションとは
制度の内容をしっかり理解して導入することで、経営を安定・発展させるためにも役立ちます。
しかし、ストックオプションはデメリットもあり、状況によっては従業員のモチベーションに悪影響を及ぼすこともあります。
ストックオプションとは?
ストックオプションとは、従業員や取締役などに対して、会社の株式を取得できる権利を付与する制度です。
もともとはアメリカで実施されてきた制度であり、日本では1997年の商法改正から可能となっています。
ストックオプションを取り入れると、その権利を持つ従業員などのモチベーションを高められるといわれています。
ストックオプションのしくみ
ストックオプションは、 将来的に会社の株式を定められた金額で買う権利を、従業員や取締役などにインセンティブとして与えられる制度 です。
将来会社の株式が定められた金額よりも高くなれば、従業員や取締役は差額を利益として得られます。
すでに株価が上昇している大企業よりも、主にこれから株価が上昇しやすいIPO前の企業などに向いている制度です。
ストックオプションを付与された人は、 一定の期間内に最初に定められた価格で会社の株式を購入できる ようになります。
株式を購入できる期間は定められており、その間に株式を購入しても良く、買わない選択も可能です。
購入する際にはその時の株価ではなく、あらかじめ設定された価格で購入できます。
そのため、株価が上がっていれば購入してすぐに売却し、利益を確定することも可能です。
また、株価が下がっていたら、購入せずに見送ることで損失をも避けられます。
ストックオプションの税制優遇措置
ストックオプションには、 税制優遇措置が可能なものとそうでないもの があります。
税制優遇措置のあるものは税制適格ストックオプション、優遇措置のないものは税制非適格ストックオプションです。
税制優遇措置の有無により、課税されるタイミングが異なります。
税制適格ストックオプションの課税は、株式売却時1回限りです。
一方、税制非適格ストックオプションは権利行使時に給与所得として、株式売却時には譲渡所得として2回課税されます。
原則としてストックオプションは給与所得として扱われ権利行使時に課税されますが、厳しい条件を満たした場合に限り、この課税は免除されます。
ストックオプションの種類
通常型ストックオプション
通常型ストックオプションは、 会社の業績が向上した時にインセンティブとして行う 一般的なものです。
権利行使価額を権利付与した時点での株価以上に設定しておきます。権利行使のタイミングで株価が上昇していると利益が出る仕組みです。
株式報酬型ストックオプション
株式報酬型ストックオプションは、権利行使価額を1円などの低額に設定しておき、 権利行使することで株式そのものが報酬となる タイプのストックオプションです。
設定された価格が低いため、株価が下落したとしても利益が出やすくなっています。さらに株価が上昇すれば、その分だけ利益は増えます。
有償ストックオプション
ほかのストックオプションでは、ストックオプション付与のタイミングでは従業員などが金銭を払う必要がありません。
しかし、有償ストックオプションでは 権利付与のタイミングで支払いが発生 します。
ストックオプションと新株予約権との違い
ストックオプションは、新株予約権のうちのひとつ という位置づけになります。
新株予約権のうち、企業と雇用関係にある人、取締役などに対して対価として付与されるものがストックオプションです。
ストックオプションのメリット・デメリット
ストックオプションには、メリットとデメリットがあります。
本来は企業が人材確保などのインセンティブとして使える制度であり、メリットを得るために使うものです。
しかし、使い方によっては良い方向に進まず、デメリットが生じることもあります。
ストックオプションのメリット
従業員にインセンティブを与えられる
ストックオプションは、従業員や取締役に与えるインセンティブとして活用できます。
さらに、企業にとっては付与のタイミングで金銭を支払う必要がないため、 資金力がない企業でも実行が可能なインセンティブ です。
資金を減らすことなく従業員や取締役へインセンティブを与えられ、それによって従業員や取締役のモチベーションは上がります。
また、新規採用のシーンでもインセンティブによって優秀な人材を確保するためにもストックオプションは効果的です。
ストックオプションは権利行使の前に辞めたら権利を失うため、入社後の流出を防ぐこともできます。
外部の協力者との長期的な付き合いを可能に
ストックオプションは外部の協力者に使うことで、彼らとの良い関係を長期的に築くことも可能です。
資金不足によって人材を増やせない場合も、ストックオプションを活用することで 資金の流出を抑えつつ外部の人材からの協力を得られます。
顧問やアドバイザー、業務委託などの外部人材も、当事者意識が高まり、モチベーションがアップします。
株式の持分の回復ができる
ストックオプションを活用すると、経営陣の株式の持分を増やせます。
投資家などから大量の資金調達を行い、 経営陣の株式の持分比率が下がっている場合 、ストックオプションを付与し行使することは効果的です。
ストックオプションのデメリット
株価が下がると従業員のモチベーションも下がる
ストックオプションでは、自社の株式への期待からモチベーションが上がることもありますが、 株価が下がることで従業員のモチベーションも下がってしまう こともあります。
株価が下がればストックオプションの行使は難しく、インセンティブとしても機能しません。
ストックオプションは、こうした株価の変動の可能性も考慮しながら利用することが必要です。
従業員間に不公平感が発生する
ストックオプションは、付与基準があいまいなまま運用した場合、従業員間で不公平感が生まれることもあります。
付与対象者以外の従業員が不満を感じる ようになり、モチベーションが低下する恐れもあります。
また、不公平感が生まれることで、従業員同士の関係性が悪化するかもしれません。
既存株式に希薄化が生じる可能性がある
ストックオプションは、 大量に発行すると既存株式が希薄化し、株式の価値が低下する恐れ があります。
既存株式の希薄化は既存株主に対して大きな影響を及ぼし、場合によっては上場後に株が一斉に売りに出されて株価下落の危機を迎えることもあります。
ストックオプションの発行方式
ストックオプションの発行方式は2種類あります。
2つは併用できないため、ストックオプションの発行を計画する際には、どちらかを選んで実施してください。
自己株式方式
自己株式方式とは、 会社が保有している自己株式を購入する権利を取締役や従業員に対して付与する方法 です。
会社は市場から自社の株式を取得して、対象となる従業員などに与える準備をすることが可能です。
商法では自己株式の取得は禁止されていますが、一定の条件のもとでストックオプションのための取得は認められています。
新株引受権方式(ワラント方式)
新株引受権方式(ワラント方式)は、 市場から自己株式を購入するのではなく、新株を発行して自社株を従業員などに与える方法 です。
会社は増資のために新株を発行し、対象者はストックオプションの権利を行使して株式を得ます。
ストックオプション制度を導入する際の注意点
ストックオプション制度を導入する際には、いくつかの注意点を守る必要があります。
ストックオプションは使い方を間違えるとデメリットにつながる場合もあるため、慎重に実施してください。
要件を把握することはもとより、よりメリットを得やすいタイミングなども押さえておきましょう。
発行のタイミングは早いうちに
ストックオプション制度の導入を決めたら、できるだけ株価の安いうちに発行してしまうことが必要です。
発行時期が遅れると株価が上昇してしまい、ストックオプションのメリットが得にくく なります。
付与上限は発行済株式数の10%~15%程度
ストックオプションは無制限に発行できるわけではなく、付与上限があります。一般的な上限は、 IPO直前で発行済株式数の10~15%程度 です。
ストックオプションは従業員などに対してはインセンティブとなりますが、既存株主には保有している株式の価値低下のリスクとなることがあります。
株式下落のリスクを抑えるためにも、発行数には注意が必要です。
発行は可能な限り1回にまとめる
ストックオプションは、できるだけ回数を分けずに1回で発行しきることが重要です。
ストックオプションは株主総会で新株予約権の総数や権利行使価額を決定し、その決議から1年間はその条件で発行できることになっています。
しかし、 1年間に理由なく数回に分けると、税制非適格と判断されるリスク が高まります。
税制適格ストックオプションの適用の可否は、ストックオプション発行のたびに判断される決まりです。
そのため、回数を分けることで、発行時点で要件を満たせず適用されないリスクも増えることになります。
特に分ける必要がない場合には、株主総会決議後、株価が変わらないうちに発行してしまうほうが安全です。
「ベスティング条項」で人材の離脱を防ぐ
ストックオプションのリスクのひとつには、ストックオプションの権利行使後に人材が離脱することがあります。
ストックオプションは、優秀な人材を採用するインセンティブにできますが、反対に権利行使した後は辞めるリスクも高くなるといえるでしょう。
リスクを防ぐための手段として、べスティング条項の設定があります。
べスティング条項とは、 一定期間が経過するまでは権利を行使できないという契約条件 です。
ストックオプション付与の際に、「100株のうち〇株のみ権利行使できる」・「残りは1年勤続後に行使できる」などの条項を設定し、人材の離脱を防げます。
ストックオプションとは?導入について解説【非上場ベンチャー企業向け】
代表弁護士
西川 暢春 (にしかわ のぶはる)
大阪弁護士会/東京大学法学部卒
弁護士
小田 学洋 (おだ たかひろ)
大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
弁護士
池内 康裕 (いけうち やすひろ)
大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
弁護士
片山 琢也 (かたやま たくや)
大阪弁護士会/京都大学法学部
弁護士
堀野 健一 (ほりの けんいち)
大阪弁護士会/大阪大学
メディア掲載情報
「わかりやすい・説明親切な対応・迅速なレスポンス」を徹底している弁護士として、フジサンケイビジネスアイに掲載されました。
書籍出版情報
著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円
ストックオプションとは|メリット・デメリット・仕訳処理
先ほど「ストックオプションは、新株予約権の一種である」とご紹介しましたが、両者は同じ意味ではありません。
新株予約権は、発行した会社に対して権利を行使することで、あらかじめ定められた条件でその会社の株式の交付を受けることができる権利です。
一方、ストックオプションは、この新株予約権のうち、財貨またはサービスの対価として付与されるタイプのものです。つまり、「報酬として付与する新株予約権」ということができます。
(2)ストックオプションのメリット
![]() |
(3)ストックオプションのデメリット
(4)上場を目指す会社の活用法
(5)上場会社の活用方法
ストックオプションは、上場会社においても活用することができます。
企業価値の向上は上場会社の課題のひとつですが、企業価値を向上させるためには、長期的な業績向上のためのモチベーションを従業員に与えることが効果的です。
ストックオプションを活用することで、従業員が自ら業績を上げ、それに伴い株価が上がれば、ストックオプションの権利行使時の収入がそのまま従業員の利益につながります。
(6)外部協力者に対する活用方法
ストックオプションの発行から行使まで
(1)ストックオプションの発行手続き
②通常型ストックオプション ストックオプションとは
通常型ストックオプションは、権利行使価額を付与時における株価以上に設定するものです。
権利を行使する時に付与時よりも株価が上昇している場合に、権利行使価額と権利行使時の株価との差額が報酬となります。つまり、株価向上へのインセンティブを付けるため、権利行使価格を付与時点の株価以上に設定します。
(2)ストックオプションの権利行使
ストックオプションの処理仕訳
(1)ストックオプションを付与したとき
「ストックオプションを役員に対して付与した。ストックオプションの公正な評価額は、200万円である。」
ストックオプションを付与したときには、借方に役員報酬または給与を費用として計上します。貸方には「新株予約権」として計上し、権利行使または執行が確定するまでの間は、新株予約権として貸借対照表の「純資産の部」に計上されます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
役員報酬 | 2,000,000 | 新株予約権 | 2,000,000 |
(2)ストックオプションの評価額の計算式
ストックオプションの公正な評価単価×ストックオプションの数 |
---|
自社の株式の評価額-権利行使価格 |
---|
ストックオプションについて相談する
freee税理士検索 では2,800以上の事務所の中から、ストックオプションや必要な対策について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」 もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」 で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
コメント